自営業は、若者より高齢層で多い

「自営業」と聞くと、最近ではITフリーランス、デザイナー、ライター、動画編集、業務委託のような働き方を想像しやすいかもしれません。

しかし、統計上の自営業には、農業、建設の一人親方、個人商店、飲食店、美容室、士業、家業なども含まれます。さらに年齢で見ると、若い世代に多いというより、高齢層で比率が大きく上がります。

総務省「令和4年就業構造基本調査」によると、15〜34歳の有業者に占める自営業主の割合は約2.2%です。家族従業者まで含めても約2.7%にとどまります。

一方、65〜74歳では自営業主が18.7%、75歳以上では33.0%まで上がります。

年齢帯

自営業主割合

自営業主+家族従業者

フリーランス割合

15〜34歳

2.2%

2.7%

1.4%

35〜49歳

5.6%

6.6%

2.9%

50〜64歳

7.5%

8.8%

3.3%

65〜74歳

18.7%

22.9%

5.9%

75歳以上

33.0%

41.9%

8.0%

若い会社員の周囲に自営業の人が少なく見えるのは、統計的にも自然です。15〜34歳では、自営業主は有業者の2%台です。

定年後に自営業が増えるように見える理由

65歳以上で自営業主割合が上がるのは、定年後に大量の人が新しく起業しているから、というより、会社員などの雇用者が先に減ることが大きいと考えられます。

会社員や公務員は、定年や再雇用終了によって労働市場から抜けやすくなります。一方、自営業には明確な定年がありません。農業、小規模商店、士業、家業、個人事業などは、本人が続けられる限り続けることができます。

その結果、有業者として残っている高齢層の中では、自営業主や家族従業者の比率が高くなります。

つまり、「65歳以上で新しいフリーランスが急増している」というより、雇用者が減り、自営業・家業・農業・小規模事業の人が残りやすい、と見る方が自然です。

では、34歳以下の自営業に近い人は何をしているのか

次に、34歳以下の若い自営業に近い層を産業別に見ます。

ここでは注意が必要です。産業別表では「自営業主」そのものを産業別に切った列が直接ないため、ここでは有業者総数から雇用者を引いた「非雇用者」を使っています。これは、自営業主、家族従業者などを含む近似値です。

別表で見た34歳以下の「自営業主+家族従業者」は約44.0万人、この近似値は約46.4万人なので、大きくは外れていないものとして扱います。

34歳以下の産業

非雇用者数

シェア

学術研究、専門・技術サービス業

7.0万人

15.0%

建設業

5.9万人

12.8%

生活関連サービス業、娯楽業

4.6万人

9.9%

サービス業(他に分類されないもの)

4.0万人

8.5%

卸売業、小売業

3.9万人

8.5%

農業、林業

3.8万人

8.2%

製造業

3.3万人

7.2%

宿泊業、飲食サービス業

2.8万人

6.1%

情報通信業

2.3万人

4.9%

教育、学習支援業

2.0万人

4.3%

若い自営業はITだけではない

34歳以下の非雇用者で最も多いのは「学術研究、専門・技術サービス業」です。ここには、デザイン、写真、設計、士業、コンサルティング、技術サービスなどが含まれます。

次に多いのが建設業です。一人親方、職人、内装、設備、電気工事などが入ります。生活関連サービス業、娯楽業には、美容師、理容、ネイル、エステ、スポーツ・娯楽関連などが含まれます。

情報通信業も2.3万人で上位には入りますが、34歳以下の非雇用者全体では4.9%です。若い自営業というと、PC一台で働くITフリーランスを想像しがちですが、人数としては専門職、建設、美容・生活サービス、小売、飲食のような分野も厚いことが分かります。

自営業を見るときは、年齢を分ける

自営業の全体像を見るときは、平均だけでは分かりません。若年層では少なく、高齢層ではかなり多いからです。

15〜34歳では自営業主は2%台です。一方で、65歳以上では雇用者が減り、自営業や家業を続ける人が残りやすいため、自営業主割合が大きく上がります。

また、若年層の中身を見ても、ITフリーランスだけが中心ではありません。専門・技術サービス、建設、美容、小売、飲食、農業など、かなり現場性のある仕事が大きな割合を占めています。

自営業は一つの働き方に見えて、年齢によっても、産業によっても中身が大きく違います。若い会社員の周囲に少なく見える感覚と、統計上は一定数いるという事実は、年齢で分けるとかなり整理しやすくなります。