「働きたくない」は、かなり広い言葉である

「働きたくない」と聞くと、何もしないで暮らしたい人を想像しがちです。

しかし実際には、かなり幅があります。

  • 完全に有給労働をやめたい人
  • 今より勤務日数を減らしたい人
  • 責任や人間関係を軽くしたい人
  • 会社に時間を管理されたくない人
  • 生活費のための仕事は嫌だが、自分の活動はしたい人

これらを全部まとめて「怠けている」と見ると、かなりズレます。

多くの人が嫌っているのは、活動そのものではなく、生活費のために他人の管理下で長時間拘束されることです。

だから、会社員の仕事は嫌でも、個人開発、投資、執筆、副業、研究、地域活動、趣味には長時間使える人がいます。

これは労働意欲が低いというより、統制される労働への意欲が低いと見た方が正確です。

欧州では、完全に辞めたい人は4人に1人程度という見方がある

欧州全体で「できれば働きたくない」と同じ質問を継続的に聞いた統一調査は見つけにくいです。

ただ、近い国際比較では、働いている人のうち、生活費を稼ぐ必要がなければ有給労働から離れたい人が一定数いるとされています。

欧州の就業者を大きく次のように整理しています。

意向

おおよその見方

お金があっても現在に近い形で働きたい

50%前後

完全には辞めないが、時間・仕事を変えたい

20〜30%程度

経済的に可能なら有給労働を辞めたい

約25%

つまり、「一切働きたくない人」は4人に1人程度かもしれません。

一方で、「今のようなフルタイム労働や仕事中心の生活には積極的ではない人」まで含めると、半数近くいる可能性があります。

ここで重要なのは、欧州人が特別に怠けているという話ではないことです。仕事を人生の中心に置かず、労働時間や働き方を自分で調整したい人が多い、という見方の方が自然です。

仕事観にはJob・Career・Callingがある

働き方への態度を考えるときに分かりやすいのが、Job・Career・Callingという仕事観です。

仕事観

仕事の意味

経済的余裕ができたとき

Job型

生活費を得る手段

労働時間を減らしやすい

Career型

昇進、地位、成長、影響力の手段

評価や成長がある限り続けやすい

Calling型

使命、意味、自己表現

収入が不要でも活動を続けやすい

Job型の人にとって、仕事は生活費を得るための手段です。必要なお金が確保できれば、仕事の量を減らすのはかなり自然です。

Career型の人にとって、仕事は出世、成長、評価、地位を得る場です。収入だけでなく、昇進や影響力が動機になります。

Calling型の人にとって、仕事は使命や意味と結びついています。お金があっても、同じような活動を続けやすいです。

この違いを無視して、「働きたいか、働きたくないか」だけで見ると、人間の動機をかなり単純化してしまいます。

Job型は、怠け者ではない

Job型の人は、仕事を人生の中心的価値と見ていません。

そのため、経済的に余裕ができれば、勤務日数や労働時間を減らしやすいです。

ただし、それは怠けているという意味ではありません。

  • 家族との時間を重視する
  • 趣味や創作を重視する
  • 健康や睡眠を重視する
  • 地域や友人との関係を重視する
  • 会社ではなく自分の活動に時間を使いたい

仕事以外に価値を置いているだけです。

むしろ、人生の大半を雇用労働に使うことを当然としない分、かなり現実的とも言えます。

Career型は、働くことで自己価値を得やすい

Career型の人は、働くことへの抵抗が比較的小さい場合があります。

仕事を通じて、昇進、収入、評価、影響力、成長を得られるからです。

このタイプは、経済的に余裕ができても、すぐには仕事をやめない可能性があります。仕事をやめることが、収入を失うだけでなく、自分の社会的な位置や達成感を失うことにもなるからです。

ただし、Career型にも弱点があります。

評価、競争、肩書き、他者比較に強く引っ張られると、仕事が好きというより、不安や承認欲求で働き続ける形になることがあります。

外から見ると熱心に働いている人でも、内側では疲弊していることがあります。

Calling型は、お金がなくても活動を続けやすい

Calling型の人は、仕事と使命が結びついています。

研究者、職人、芸術家、起業家、医療・福祉・教育に強い意味を感じる人などに見られます。ただし、職種だけで決まるわけではありません。

Calling型の人にとって、仕事は単なる収入源ではありません。

  • 作りたいものがある
  • 解きたい問題がある
  • 助けたい人がいる
  • 表現したいことがある
  • 人生で成し遂げたいことがある

こういう人は、経済的に自由になっても活動を続けやすいです。

ただし、Calling型が常に幸せとも限りません。使命感が強いほど、働きすぎたり、搾取されやすくなったり、休むことに罪悪感を持ったりすることもあります。

一人の中に3つの仕事観が混ざる

実際には、人を1つの型に固定するのは無理があります。

同じ人の中にも、Job、Career、Callingは混ざります。

活動

仕事観

生活費のための事務作業

Job

昇進や評価につながる仕事

Career

自分が本当に作りたいもの

Calling

たとえば、会社員としての仕事はJob型でも、個人メディアや創作活動はCalling型という人は普通にいます。

あるいは、会社の中で昇進したいCareer型の部分と、本当に解きたい課題に向かうCalling型の部分が同居する人もいます。

だから正確には、「この人は何型か」ではなく、「この活動に対する動機はどれに近いか」と見た方がよいです。

働きたくない人の多くは、活動したくないわけではない

脱労働の文脈で重要なのはここです。

働きたくない人の多くは、無活動になりたいわけではありません。

嫌なのは、次のようなものです。

  • 週5日・8時間を固定される
  • 意味の薄い会議に出る
  • 人間関係に拘束される
  • 評価制度に巻き込まれる
  • 上司や会社の都合で時間を決められる
  • 生活費のために断れない状態になる

つまり、仕事そのものより、雇用労働の拘束性を嫌っている場合が多いです。

このタイプの人は、自由にやってよいと言われれば、むしろかなり活動的になります。

  • 文章を書く
  • サイトを作る
  • 投資を学ぶ
  • 小商いを試す
  • 地域に関わる
  • 旅をする
  • 友人や家族との時間を作る

これは「怠け」ではなく、人生の中心を会社に置かない選択です。

週4勤務や短時間労働が刺さる理由

完全に仕事をやめたい人は、一定数います。

しかし、もっと多いのは「今のようには働きたくない人」です。

だから週4勤務、短時間正社員、業務委託、アルバイト、副業、NISAや資産形成が刺さります。

手段

減らせるもの

週4勤務

勤務日数、疲労、回復不足

短時間正社員

1日の拘束時間

業務委託

会社内の評価、人間関係、稼働条件

アルバイト

責任、会議、キャリア競争

資産形成

生活費のために断れない状態

脱労働は、いきなり無職になる話ではありません。

会社に握られている時間、人間関係、評価、生活費依存を少しずつ減らす話です。

結論:働きたくないのではなく、仕事を人生の中心にしたくない人が多い

「働きたくない人」は、単純に怠けているわけではありません。

仕事を生活費の手段と見るJob型の人にとって、必要なお金が確保できれば労働を減らしたいのは自然です。Career型の人は評価や成長がある限り働きやすく、Calling型の人は収入がなくても活動を続けやすい。

欧州の調査を見ても、経済的に可能なら有給労働を辞めたい人は一定数います。ただし、それ以上に多いのは、完全に辞めたい人ではなく、今より短く、軽く、自分で選べる形で働きたい人です。

脱労働で目指すべきなのは、何もしない生活ではありません。生活費のために、他人の決めた時間と場所で長く拘束される状態を減らすことです。仕事を人生の中心にしない。そのために資産、週4勤務、業務委託、副業、小商いを組み合わせていく。この方が、現実的で人間らしい出口になります。