オルカンの世界株の指数で過去にさかのぼる

オルカン、つまり eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は2018年10月に設定された比較的新しい投資信託です。

しかし、連動対象として使われる世界株指数に近いデータは、それ以前にも存在します。MSCI ACWIは先進国と新興国の大型・中型株を対象とする指数で、世界の投資可能な株式市場のかなり広い範囲をカバーします。

したがって、厳密な商品実績ではなく、次のような仮定なら「仮想オルカン」の推移を考えられます。

  • 1987年末に100万円を一括投資
  • 世界株に時価総額加重で分散
  • 配当は再投資
  • 為替ヘッジなし
  • 2026年6月末まで保有

結論から言うと、100万円は約3,569万円、約35.7倍になった計算です。ただし、途中には5年保有してもマイナスになる期間が普通にあります。

この記事の数字は、MSCI ACWIの長期指数データと、共有された試算上の年次推移をもとにした概算です。1988〜2011年は特に「イメージをつかむための再構成値」として見てください。大切なのは1年単位の完全な正確性より、長期投資の体感です。

1988年から持った場合の年次推移

まずは、1987年末に100万円を投資した場合の年末評価額です。2026年は6月末までです。

年末

その年の概算騰落率

評価額

1987年

-

100万円

1988年

+34.1%

134万円

1989年

+38.4%

186万円

1990年

-21.6%

145万円

1991年

+9.3%

159万円

1992年

-5.0%

151万円

1993年

+10.2%

166万円

1994年

-6.2%

156万円

1995年

+23.6%

193万円

1996年

+28.4%

248万円

1997年

+27.8%

316万円

1998年

+6.0%

335万円

1999年

+14.6%

385万円

2000年

-3.0%

373万円

2001年

-3.6%

360万円

2002年

-27.0%

263万円

2003年

+20.5%

316万円

2004年

+10.7%

350万円

2005年

+26.0%

441万円

2006年

+22.0%

538万円

2007年

+5.4%

568万円

2008年

-52.9%

267万円

2009年

+38.0%

369万円

2010年

-1.6%

363万円

2011年

-11.6%

321万円

2012年

+31.3%

421万円

2013年

+50.1%

632万円

2014年

+19.4%

755万円

2015年

-1.5%

744万円

2016年

+5.2%

783万円

2017年

+20.4%

942万円

2018年

-11.3%

835万円

2019年

+26.1%

1,053万円

2020年

+11.0%

1,169万円

2021年

+32.8%

1,552万円

2022年

-6.0%

1,459万円

2023年

+31.2%

1,915万円

2024年

+31.6%

2,519万円

2025年

+22.6%

3,087万円

2026年6月

+15.6%

約3,569万円

最終結果だけ見ると強烈です。100万円が約3,569万円なので、元本の約35.7倍です。

しかし、推移を見るとかなりきついです。1999年末に385万円まで増えた後、ITバブル崩壊で2002年末には263万円まで落ちています。2007年末には568万円まで戻りますが、リーマンショック後の2008年末には267万円まで落ちます。

つまり、20年以上持っていても、2008年末時点では100万円が約267万円です。最終的な大きな伸びは、かなりの部分が2012年以降に集中しています。

5年ごとに見ると、マイナス期間がはっきり出る

次に、5年ごとの平均実績を見ます。ここでの年率平均は単純平均ではなく、開始評価額から終了評価額までの増減を複利でならしたCAGRです。

期間

開始時評価額

終了時評価額

期間損益

年率平均

1988〜1992年

100万円

151万円

+51%

約8.6%

1993〜1997年

151万円

316万円

+109%

約15.9%

1998〜2002年

316万円

263万円

-17%

約-3.6%

2003〜2007年

263万円

568万円

+116%

約16.6%

2008〜2012年

568万円

421万円

-26%

約-5.8%

2013〜2017年

421万円

942万円

+124%

約17.5%

2018〜2022年

942万円

1,459万円

+55%

約9.1%

2023〜2026年6月

1,459万円

3,569万円

+145%

約29.1%

1988〜2026年6月・全期間

100万円

3,569万円

+3,469%

約9.7%

この表で重要なのは、5年単位では普通にマイナスがあることです。

1998〜2002年は年率約-3.6%、2008〜2012年は年率約-5.8%です。世界分散していても、5年間持って資産が減ることはあります。

一方で、良い5年はかなり強いです。1993〜1997年は年率約15.9%、2003〜2007年は年率約16.6%、2013〜2017年は年率約17.5%です。2023〜2026年6月は年率約29.1%ですが、これは3年半程度の短い期間で、株高と円安が重なったかなり特殊な好調期です。

10年ごとに見ると、低調な10年と好調な10年の差が大きい

5年では切り取り方の影響が大きいので、10年程度で見ると少し落ち着きます。

期間

評価額の変化

年率平均

1988〜1997年

100万円 → 316万円

約12.2%

1998〜2007年

316万円 → 568万円

約6.0%

2008〜2017年

568万円 → 942万円

約5.2%

2018〜2025年

942万円 → 3,087万円

約16.0%

1988〜2025年全体

100万円 → 3,087万円

約9.4%

1988〜2026年6月全体

100万円 → 3,569万円

約9.7%

10年単位では、今回の区切りではすべてプラスです。ただし、成績差はかなりあります。

1988〜1997年は年率約12.2%、2018〜2025年は年率約16.0%です。一方、1998〜2007年は約6.0%、2008〜2017年は約5.2%です。

同じ世界株投資でも、どの10年を切り取るかで印象はかなり変わります。長期平均だけを見ると年率9〜10%に見えますが、実際には5〜6%の10年もあり、15%を超える期間もあります。

最終実績だけを見ると、リスクを見落とす

1988年から2026年6月までの全期間では、100万円が約3,569万円です。期間損益は+3,469%、年率平均は約9.7%です。

これは非常に強い数字です。ただし、投資家の体感としては、最終結果ほど簡単ではありません。

局面

評価額の変化

見え方

1999年末〜2002年末

385万円 → 263万円

ITバブル崩壊で約32%減

2007年末〜2008年末

568万円 → 267万円

年末値で約53%減

2008年末時点

投資開始から約21年で267万円

長く持っても増え方は地味に見える

2012年末〜2026年6月

421万円 → 3,569万円

後半で約8.5倍

特に2008年は厳しいです。年末値だけでも568万円から267万円へ減り、約53%の下落です。月中の底値ベースではさらに深いドローダウンがありました。

つまり、最終的に35倍になった投資でも、途中では半分以下になる時期があります。長期投資の難しさは、期待リターンではなく、この途中の下落に耐えられるかにあります。

実際のオルカンなら、指数より少し低く見る

ここまでの表は、指数に近い仮想実績です。実際の投資信託なら、最終額は少し下がります。

主な理由は次の通りです。

  • 信託報酬
  • 売買コスト
  • 配当への税コスト
  • 指数との連動誤差

現在のオルカンに近い低コスト商品が1988年から存在したと仮定しても、3,569万円をそのまま受け取るのはやや強めです。ざっくり見るなら、実際の商品ベースでは3,350万〜3,500万円程度に下げて考える方が自然です。

見方

100万円の最終評価額

指数に近い仮想実績

約3,569万円

低コスト投信として控えめに見る

約3,350万〜3,500万円

年率平均

指数ベースで約9.7%

この差も重要です。長期では年0.1%や年0.2%のコスト差でも、数十年後の評価額に効きます。

将来の計画には9.7%をそのまま使わない

1988〜2026年6月の仮想オルカンは、年率約9.7%というかなり強い結果でした。

しかし、資産計画でこの数字をそのまま使うのは危険です。特に2012年以降は、米国株高、巨大テックの上昇、円安が重なり、日本人投資家にかなり有利な環境でした。

将来の試算では、次のように分ける方が現実的です。

想定

年率

使い方

保守的

3〜4%

生活設計や老後資金の安全側

標準的

5〜6%

長期積立の中心シナリオ

強気

7〜8%

株式に有利な環境が続く場合

過去実績並み

9〜10%

1988年以降の再現に近い強めの仮定

過去の数字を知る意味は、未来も同じになると信じることではありません。長期で大きく増える可能性と、その途中で普通に数年単位のマイナスがあることを同時に理解するためです。

結論:仮想オルカンは強かったが、楽な投資ではなかった

1987年末に100万円を投じ、2026年6月まで仮想オルカンを持っていた場合、最終評価額は約3,569万円です。約35.7倍、年率平均約9.7%という非常に強い実績です。

ただし、途中経過はきれいではありません。1998〜2002年は5年で-17%、年率約-3.6%。2008〜2012年は5年で-26%、年率約-5.8%。2007年末から2008年末には、年末値同士でも評価額が約53%減っています。

つまり、仮想オルカンの本質は「長く持てば簡単に増えた」ではありません。実際には、長い停滞、半減級の下落、5年単位のマイナスを通過した人だけが、最終的に100万円を約3,569万円まで育てられた、という話です。NISAでオルカンを持つなら、期待リターンよりも、下落期に売らずに続けられる設計の方が重要です。