オルカンとS&P500の比較
NISAの投資先としてよく比べられるのが、オルカンとS&P500です。
ただ、この比較は「最近どちらが上がったか」だけで見るとかなり危ういです。2024年まではS&P500が強く見え、2025年以降はオルカンが少し強く見える局面もあります。だからこそ、同じ期間、同じ通貨、同じ投資信託同士で並べる必要があります。
ここでは、次の2本を比較します。
- オルカン:eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- S&P500:eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
どちらも円建て、為替ヘッジなし、分配金はこれまで0円です。オルカンの設定日は2018年10月31日なので、2018年は通年比較から外し、暦年で比較できる2019年以降を見ます。
結論から言うと、2019〜2025年の7年間ではS&P500が明確に勝っています。ただし、差のかなりの部分は2021年と2024年に集中しています。
年ごとの実績比較
まずは年ごとの数字です。単位は年率リターンで、差は大きい方から見たポイント差です。
年 | オルカン | S&P500 | 差 | 勝者 |
|---|---|---|---|---|
2019年 | +26.82% | +30.51% | S&P500が+3.69pt | S&P500 |
2020年 | +8.96% | +10.30% | S&P500が+1.34pt | S&P500 |
2021年 | +32.71% | +44.52% | S&P500が+11.81pt | S&P500 |
2022年 | -5.58% | -6.09% | オルカンが+0.51pt | オルカン |
2023年 | +30.42% | +34.63% | S&P500が+4.21pt | S&P500 |
2024年 | +32.48% | +40.78% | S&P500が+8.30pt | S&P500 |
2025年 | +20.51% | +15.66% | オルカンが+4.85pt | オルカン |
2026年1〜6月 | +13.94% | +12.30% | オルカンが+1.64pt | オルカン |
2019〜2025年だけを見ると、S&P500は7年中5勝、オルカンは2勝です。さらに2026年上半期を足すと、オルカンが2025年、2026年上半期と連続で上回っています。
ここで大事なのは、S&P500が毎年圧倒しているわけではないことです。2020年の差は1.34ポイント、2022年はオルカンが0.51ポイント上回っています。一方で、2021年と2024年はS&P500が大きく勝っています。
100万円を2019年初に投資していたらどうなったか
年ごとのリターンを複利でつなぐと、差はかなり分かりやすくなります。
2019年初に100万円を一括投資し、2025年末まで保有した場合の概算は次の通りです。
項目 | オルカン | S&P500 | 差 |
|---|---|---|---|
投資元本 | 100万円 | 100万円 | 0円 |
2025年末の評価額 | 約360.5万円 | 約428.3万円 | S&P500が約67.7万円多い |
累積リターン | 約+260.5% | 約+328.3% | S&P500が+67.7pt |
年率換算 | 約20.1% | 約23.1% | S&P500が約+3.0pt |
最終資産額の差 | - | - | S&P500が約18.8%大きい |
この期間だけを見るなら、S&P500の勝ちです。100万円あたり約67.7万円の差は小さくありません。1,000万円なら約677万円、1,800万円なら約1,219万円の差に拡大します。
ただし、この差をそのまま未来に伸ばすのは危険です。2019〜2025年は、米国大型株、特に巨大テックにかなり有利な期間でした。円安も円建てS&P500のリターンを押し上げました。
差のかなりの部分は2021年と2024年に出ている
年次表を見ると、S&P500の優位は均等に積み上がったわけではありません。
年 | S&P500の上回り幅 | 意味 |
|---|---|---|
2021年 | +11.81pt | 米国大型株が強く、差が大きく開いた年 |
2024年 | +8.30pt | AI・巨大テック・米国株集中が効いた年 |
2019年 | +3.69pt | S&P500優位だが決定的な差ではない |
2023年 | +4.21pt | 米国株回復が強かった年 |
つまり、過去7年のS&P500優位は「米国集中が正しかった」というより、「米国大型株が特に強かった局面を大きく取れた」と見る方が正確です。
逆に言えば、米国以外の株式が見直される局面では、オルカンが普通に勝つこともあります。2025年はオルカンが+20.51%、S&P500が+15.66%で、オルカンが4.85ポイント上回りました。2026年1〜6月も、オルカンが+13.94%、S&P500が+12.30%で、オルカンが1.64ポイント上回っています。
直近1年ではほぼ横並びに近い
三菱UFJ銀行の投資信託ページで確認できる2026年6月末基準のトータルリターンでは、オルカンの直近1年は+38.24%、S&P500は+36.50%です。
期間 | オルカン | S&P500 | 差 |
|---|---|---|---|
1カ月 | +0.74% | +0.31% | オルカンが+0.43pt |
3カ月 | +18.15% | +19.41% | S&P500が+1.26pt |
6カ月 | +13.94% | +12.30% | オルカンが+1.64pt |
1年 | +38.24% | +36.50% | オルカンが+1.74pt |
3年 | +24.55% | +25.13% | S&P500が+0.58pt |
5年 | +19.72% | +21.98% | S&P500が+2.26pt |
この表を見ると、長めに見ればS&P500が強い一方、直近ではオルカンもかなり近いところまで来ています。少なくとも「S&P500を選べば常に圧勝」という数字ではありません。
コストと純資産も比較する
リターンだけでなく、商品としての数字も見ておきます。2026年7月28日時点で確認できる主な数字は次の通りです。
項目 | オルカン | S&P500 |
|---|---|---|
基準価額 | 38,183円 | 44,650円 |
純資産総額 | 約13.20兆円 | 約12.54兆円 |
信託報酬 | 年0.057% | 年0.081% |
直近決算時分配金 | 0円 | 0円 |
信託設定日 | 2018年10月31日 | 2018年7月3日 |
信託報酬はオルカンの方が低く、純資産総額もオルカンの方が大きい水準です。ただし、両方とも十分に大きいファンドなので、ここだけで決定的な差をつける必要はありません。
重要なのは、S&P500の方が高リターンだった過去がある一方で、オルカンはより広く分散し、コストも低いということです。
NISAでは「過去に勝った方」より「持ち続けられる偏り」を選ぶ
数字だけを見れば、2019〜2025年はS&P500が明確に上回りました。100万円が約428.3万円になり、オルカンの約360.5万円に対して約67.7万円の差が出ています。
しかし、この比較から「だからS&P500一択」と結論づけるのは少し早いです。
S&P500は米国大型株への集中投資です。米国企業の利益成長、巨大テック、ドル、米国株のバリュエーションが強ければ大きく伸びます。一方で、米国株が割高になったり、米国外株が見直されたり、円高になったりすると、オルカンが上回る局面もあります。
考え方 | 向きやすい選択 |
|---|---|
米国大型株の成長を強く信じる | S&P500 |
過去7年の高リターンを重視する | S&P500 |
米国集中のリスクを下げたい | オルカン |
毎年の勝敗で迷いたくない | オルカン |
米国が不調でも買い続けられる | S&P500でもよい |
投資判断に時間を使いたくない | オルカン寄り |
NISAは長く非課税で持つ制度です。途中で迷って売るくらいなら、理論上の期待リターンが少し高そうな商品より、自分が20年持ち続けられる商品を選ぶ方が現実的です。
結論:過去7年はS&P500、ただし2025年以降はオルカンも上回っている
2019〜2025年の実績比較では、S&P500が7年中5勝、オルカンが2勝です。100万円を2019年初に投資した場合、2025年末にはオルカンが約360.5万円、S&P500が約428.3万円となり、差は約67.7万円です。
この数字は重いです。過去の実績だけを見れば、S&P500の方が明確に強かったと言えます。
一方で、2025年はオルカンが4.85ポイント上回り、2026年1〜6月もオルカンが1.64ポイント上回っています。直近1年でも、オルカン+38.24%、S&P500+36.50%で、オルカンが少し上です。
つまり、過去の累積ではS&P500が勝っている。ただし、勝ち方は米国大型株が強かった局面にかなり依存しており、局面が変わればオルカンが上回ることも普通にある。NISAで大事なのは、過去の勝者を追うことではなく、自分が長く持てる偏りを数字で理解して選ぶことです。