為替と投資運用を一緒に見る
外国株やオルカンのような海外資産に投資するとき、見落としやすいのが為替です。
株式の運用利回りだけを見れば、年5%で30年積み立てるとかなり大きな資産になります。しかし、日本円で生活する人にとっては、最後に円換算した金額が重要です。ドル建て資産が増えていても、円高になれば円換算額は削られます。逆に円安になれば、運用益以上に大きく見えることがあります。
重要なのは、為替リスクが消えるかではなく、30年後の資産額にどれくらいの幅を作るかです。
今回は、為替と投資運用を同時にシミュレーションします。見るべき中心は極端な上位10%・下位10%ではなく、現実感のある中央50%、つまり25%点から75%点の範囲です。
シミュレーションの前提
前提は次の通りです。
項目 | 前提 |
|---|---|
初期海外資産 | 1,000万円 |
年間積立 | 300万円 |
30年間の積立合計 | 9,000万円 |
投入元本合計 | 1億円 |
外貨建て運用利回り | 年5% |
初期為替 | 1ドル160円 |
運用期間 | 30年 |
為替データ | 1995〜2025年のドル円年平均変化率 |
シミュレーション回数 | 10万通り |
1995〜2025年のドル円データを使う理由は、1970年代の固定相場から変動相場への移行期を避けるためです。今回は「これから30年で円高になる」「円安になる」と決め打ちするのではなく、過去の年次変動幅を使いながら、長期的な方向性はゼロに調整しています。
つまり、毎年の為替は動きます。ただし、平均的には円高にも円安にも寄せないモデルです。
使った為替変動の特徴
1995〜2025年のドル円年平均から見ると、為替変動の特徴は次のようになります。
項目 | 数値 |
|---|---|
平均絶対変動 | 約7.7% |
年次標準偏差 | 約9.1% |
最大円安方向 | 約+22.3% |
最大円高方向 | 約-13.2% |
年に7〜8%程度動くことは珍しくありません。30年では、それが積み重なります。だから、積立で購入時点は分散されても、最終的な円換算額の幅はかなり残ります。
30年後の結論
まず30年後だけを見ると、結果はこうなります。
指標 | 30年後 | 為替変動なしとの差 |
|---|---|---|
累計元本 | 1億円 | - |
為替変動なし | 約2億4,254万円 | 0円 |
25%点 | 約1億9,354万円 | 約-4,900万円 |
中央値 | 約2億4,475万円 | 約+221万円 |
75%点 | 約3億1,289万円 | 約+7,036万円 |
半分のケースは、約1.94億円から約3.13億円の範囲に入りました。
為替変動なしでは約2.43億円です。中央値はそれにかなり近い一方で、25%点では約4,900万円少なく、75%点では約7,000万円多い。ここが為替込み投資の現実です。
元本1億円と比べると25%点でも十分増えています。しかし、比較すべき中心は元本ではありません。同じ年5%で運用した「為替変動なし」の2.43億円と比べるべきです。そう見ると、為替だけで数千万円単位の差が出ます。
推移で見ると、差は後半ほど大きくなる
次に、5年ごとの推移を見ます。単位は万円です。
経過年数 | 累計元本 | 為替変動なし | 25%点 | 中央値 | 75%点 |
|---|---|---|---|---|---|
0年 | 1,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 | 1,000万円 |
5年 | 2,500万円 | 2,934万円 | 2,671万円 | 2,935万円 | 3,237万円 |
10年 | 4,000万円 | 5,402万円 | 4,752万円 | 5,412万円 | 6,196万円 |
15年 | 5,500万円 | 8,552万円 | 7,325万円 | 8,579万円 | 1億126万円 |
20年 | 7,000万円 | 1億2,573万円 | 1億527万円 | 1億2,664万円 | 1億5,372万円 |
25年 | 8,500万円 | 1億7,704万円 | 1億4,468万円 | 1億7,871万円 | 2億2,239万円 |
30年 | 1億円 | 2億4,254万円 | 1億9,354万円 | 2億4,475万円 | 3億1,289万円 |
推移で見ると、為替の差は後半ほど大きくなります。
5年時点では、25%点が2,671万円、75%点が3,237万円です。差は約566万円です。30年後には、25%点が1億9,354万円、75%点が3億1,289万円です。差は約1億1,935万円まで広がります。
これは、資産額そのものが大きくなるからです。同じ10%の為替変動でも、資産が3,000万円のときと3億円のときでは、円換算額への影響がまったく違います。
ドル円の中央50%もかなり広い
30年後のドル円も、中央50%で見るとかなり幅があります。
指標 | 30年後のドル円 |
|---|---|
25%点 | 約114円 |
中央値 | 約160円 |
75%点 | 約224円 |
開始時点は1ドル160円です。中央値は約160円なので、中心だけを見るとほぼ変わっていません。
しかし、中央50%でも25%点は約114円、75%点は約224円です。かなり広いです。これは予測ではなく、1995〜2025年程度の年次変動を30回積み重ねると、中央50%でもこのくらい散らばる、という意味です。
為替リスクは年数で消えない
よくある誤解は、長期積立をすれば為替リスクが消える、というものです。
正確には違います。長期積立で薄まるのは、購入タイミングの集中リスクです。
リスク | 積立でどうなるか |
|---|---|
一括購入直後の円高リスク | 積立ならかなり薄まる |
購入為替の偏り | 複数年に分散される |
最終的な円換算額の為替リスク | 残る |
資産が大きくなった後の為替変動 | 金額影響はむしろ大きくなる |
今回の推移でも、中央値は為替変動なしに近いです。しかし25%点と75%点の差は、年数が進むほど広がります。
つまり、積立は為替リスクをゼロにはしません。入口の偏りを減らすだけです。出口で円換算する以上、最後の為替水準は残ります。
30年後に見るべき数字
今回のシミュレーションで見るべき数字は、次の4つです。
見る数字 | 意味 |
|---|---|
累計元本 1億円 | 自分が実際に入れたお金 |
為替変動なし 2億4,254万円 | 年5%運用だけを見た基準値 |
25%点 1億9,354万円 | 中央50%の下側。悪めだが極端ではないケース |
75%点 3億1,289万円 | 中央50%の上側。良めだが極端ではないケース |
この見方をすると、為替込みの30年投資は「1億円がだいたい2.4億円になる」とだけ言うより、かなり現実に近くなります。
より正確には、半分のケースは約1.94億円から約3.13億円の間に入り、中心は約2.45億円です。
結論:為替込みの運用は、中央値だけでは足りない
初期1,000万円、年300万円積立、外貨建て年5%運用を30年間続けると、為替変動なしでは約2億4,254万円になります。
1995〜2025年のドル円変動幅を使った中立モデルでは、30年後の25%点は約1億9,354万円、中央値は約2億4,475万円、75%点は約3億1,289万円でした。
つまり、中心だけ見れば為替変動なしとほぼ同じです。しかし、中央50%の幅だけでも約1.2億円あります。長期積立は購入時点の為替リスクを分散しますが、最終的な円換算額のブレは残ります。為替と投資運用を考えるなら、平均や中央値ではなく、25%点と75%点の推移を見るべきです。