老後資産は、目標額を決めないと増やしすぎる
資産形成は、目標額を決めないと終わりません。
老後不安、医療不安、介護不安、長生き不安、インフレ不安。すべてを大きめに見積もると、1億円でも2億円でもまだ足りないように見えてきます。
しかし、共働きで2人とも厚生年金がある世帯では、老後の収入がかなり厚くなります。単身で年金月7万〜10万円を前提にする場合とは、必要資産の見え方が大きく変わります。
老後資金は最大化するものではなく、必要額を決めて逆算するものです。
前提:共働き・厚生年金ありの厚めケース
ここでは、共働きで2人とも厚生年金がある世帯を想定します。
厚生労働省の2026年度年金額改定資料では、厚生年金期間中心の例として、男性が月176,793円、女性が月134,640円という概算が示されています。合計すると月311,433円です。
この記事では、厚めケースとして夫婦の年金合計を月32万円と置きます。
年金収入 | 夫婦合計 月32万円 |
|---|---|
老後期間 | 65〜95歳の30年 |
予備費 | 1,000万〜2,000万円 |
65歳以降の運用 | まずは考慮しない |
実際の年金額は、年収、加入期間、働き方、受給開始年齢によって変わります。正確には、ねんきんネットで自分の見込額を確認する必要があります。
生活費別に見ると、2億円はかなり大きい
年金収入が月32万円ある場合、老後生活費が月30万円前後なら、生活費の多くは年金で賄えます。
生活費別に見ると、65歳時点で必要な資産は次のようになります。
老後生活費 | 年金月32万円との差 | 30年分の不足額 | 予備費込み目安 |
|---|---|---|---|
月25万円 | 月7万円余る | 0円 | 1,000万〜2,000万円 |
月30万円 | 月2万円余る | 0円 | 1,000万〜2,000万円 |
月35万円 | 月3万円不足 | 1,080万円 | 2,000万〜3,000万円 |
月40万円 | 月8万円不足 | 2,880万円 | 4,000万〜5,000万円 |
月45万円 | 月13万円不足 | 4,680万円 | 5,700万〜6,700万円 |
月50万円 | 月18万円不足 | 6,480万円 | 7,500万〜8,500万円 |
この表を見ると、共働き厚生年金ありで生活費が月30万〜35万円に収まるなら、65歳時点で必要なのは生活費を埋める資産というより、予備費です。
月40万円の生活でも、予備費込みで4,000万〜5,000万円程度が一つの目安になります。
つまり、共働き・厚生年金あり・生活費が極端に高くない世帯では、65歳時点で2億円を目指す必要性はかなり薄くなります。
65歳以降も運用するなら、必要額はさらに下がる
上の表は、65歳以降の運用を考えず、単純に30年分を足したものです。
実際には、65歳以降もすべてを現金で持つとは限りません。資産の一部を運用しながら取り崩すなら、必要額はさらに下がります。
たとえば、生活費月40万円、年金月32万円、月8万円不足のケースです。年間不足額は96万円です。
65歳以降の実質運用利回り | 30年分を賄う必要資産 |
|---|---|
0% | 約2,880万円 |
1% | 約2,480万円 |
2% | 約2,150万円 |
ここに予備費1,000万〜2,000万円を足すと、月40万円生活でも65歳時点で3,500万〜4,500万円程度が現実的な目安になります。
65歳時点の資産目安
共働き厚生年金ありなら、65歳時点の目安は次のように考えられます。
65歳時点資産 | 状態 |
|---|---|
2,000万円 | 生活費月30万円前後なら、主に予備費として機能する |
3,000万円 | 生活費月35万円程度でもかなり安心しやすい |
5,000万円 | 生活費月40万円程度でも余裕が出る |
7,000万円 | 月45万円生活や大きな予備費にも対応しやすい |
1億円 | かなり強い安心。ただし生活費次第では余剰感が出る |
2億円 | 高生活費、相続、大支出向け。低支出世帯では過剰になりやすい |
この記事の結論に近いのは、65歳時点で5,000万円あればかなり強い、という見方です。
生活費が月30万〜35万円なら、3,000万円台でも成立しやすい。月40万円以上のゆとりある生活を見ても、5,000万円前後でかなり現実的です。
では、65歳までにいくら積み立てればよいか
目標額を決めたら、次は投資で逆算します。
ここでは、65歳時点の目標額を2,000万円、3,000万円、5,000万円、7,000万円に分け、年3%、5%、7%で運用した場合の毎月積立額を見ます。税金、手数料、インフレは単純化のため含めません。
65歳時点で2,000万円を作る場合
年利 | 10年 | 15年 | 20年 | 25年 | 30年 |
|---|---|---|---|---|---|
3% | 月14.3万円 | 月8.8万円 | 月6.1万円 | 月4.5万円 | 月3.5万円 |
5% | 月13.0万円 | 月7.6万円 | 月4.9万円 | 月3.4万円 | 月2.5万円 |
7% | 月11.7万円 | 月6.4万円 | 月3.9万円 | 月2.6万円 | 月1.7万円 |
65歳時点で3,000万円を作る場合
年利 | 10年 | 15年 | 20年 | 25年 | 30年 |
|---|---|---|---|---|---|
3% | 月21.5万円 | 月13.3万円 | 月9.2万円 | 月6.8万円 | 月5.2万円 |
5% | 月19.4万円 | 月11.3万円 | 月7.4万円 | 月5.1万円 | 月3.7万円 |
7% | 月17.5万円 | 月9.6万円 | 月5.9万円 | 月3.8万円 | 月2.6万円 |
65歳時点で5,000万円を作る場合
年利 | 10年 | 15年 | 20年 | 25年 | 30年 |
|---|---|---|---|---|---|
3% | 月35.9万円 | 月22.1万円 | 月15.3万円 | 月11.3万円 | 月8.6万円 |
5% | 月32.4万円 | 月18.9万円 | 月12.3万円 | 月8.5万円 | 月6.1万円 |
7% | 月29.2万円 | 月16.1万円 | 月9.9万円 | 月6.4万円 | 月4.3万円 |
65歳時点で7,000万円を作る場合
年利 | 10年 | 15年 | 20年 | 25年 | 30年 |
|---|---|---|---|---|---|
3% | 月50.2万円 | 月30.9万円 | 月21.4万円 | 月15.8万円 | 月12.1万円 |
5% | 月45.3万円 | 月26.4万円 | 月17.2万円 | 月12.0万円 | 月8.6万円 |
7% | 月40.9万円 | 月22.5万円 | 月13.8万円 | 月8.9万円 | 月6.0万円 |
30年あるなら、5,000万円でも年5%で月6.1万円です。夫婦で見れば、1人あたり月3万円程度です。
共働きで厚生年金が厚い場合、65歳時点で5,000万円を目安にするなら、長期ではそこまで極端な積立額ではありません。
すでに資産がある場合は、さらに必要積立額が下がる
すでに運用資産がある場合、追加積立額は大きく下がります。
たとえば、現在1,000万円を持っていて、65歳まで30年ある場合、年5%で運用できれば追加積立なしでも約4,322万円になります。
現在の運用資産 | 30年後・年3% | 30年後・年5% | 30年後・年7% |
|---|---|---|---|
500万円 | 約1,214万円 | 約2,161万円 | 約3,806万円 |
1,000万円 | 約2,427万円 | 約4,322万円 | 約7,612万円 |
1,500万円 | 約3,641万円 | 約6,483万円 | 約1億1,418万円 |
2,000万円 | 約4,855万円 | 約8,644万円 | 約1億5,225万円 |
この表を見ると、すでに1,000万〜2,000万円の運用資産がある人は、65歳時点の必要資産にかなり近づいている可能性があります。
特に共働き厚生年金ありで、65歳時点の目標を3,000万〜5,000万円に置くなら、今後も全力で積み立て続ける必要はないかもしれません。
2億円を目指す前に、生活費と年金を見る
2億円という金額は、安心感としては強いです。高い生活費、相続、住宅購入、介護、子ども支援、大きな寄付を想定するなら、意味がある場合もあります。
しかし、共働きで厚生年金があり、生活費が月30万〜40万円程度なら、2億円はかなり大きい目標です。
その目標に向けて長くフルタイム労働を続けるなら、得られる安心と失う若い時間を比べる必要があります。
老後資金を増やすことは大切です。ただし、必要額を超えた後は、資産形成ではなく資産最大化ゲームになっている可能性があります。
結論:共働き厚生年金ありなら、65歳5,000万円はかなり強い目安
共働きで2人とも厚生年金があるなら、老後の必要資産は思ったより小さくなる可能性があります。
生活費が月30万〜35万円なら、年金だけでかなり賄えます。生活費月40万円でも、65歳時点で4,000万〜5,000万円あればかなり現実的です。
そして30年の投資期間があるなら、5,000万円は年5%で月6.1万円の積立です。夫婦で分ければ、1人あたり月3万円程度です。すでに運用資産があるなら、必要積立額はさらに下がります。
65歳時点で本当に必要な額を逆算すると、2億円を目指す必要はない人も多いはずです。老後不安を理由に無限に働く前に、生活費、年金、投資期間から必要額を決めることが大切です。