子育て費用は、大きな数字のまま見ると判断を誤る
子ども1人を大学卒業まで育てる費用は、かなり大づかみに言うと2,000万〜3,000万円程度と見られます。
この数字だけを見ると、子どもを持つことが極端に重い負担に見えます。
しかし、ここにはいくつかの性質が違う費用が混ざっています。
- 日々の食費、衣服、スマホ、交通、レジャーなどの生活費
- 幼稚園から高校までの学習費
- 塾、習い事、受験費用
- 大学の授業料
- 大学で一人暮らしする場合の生活費
- 親の時短勤務、休業、転職による収入減
これらを全部まとめて「2,000万円」と見ると、対策が見えにくくなります。
子育て費用で本当に設計すべきなのは、総額そのものではなく、いつ、何に、まとまったお金が必要になるかです。
脱労働の観点でも、ここは重要です。子どもがいるから正社員を絶対に続けないといけない、と考える前に、どの費用が毎月の生活費で、どの費用が将来の山場なのかを分けた方がいいです。
ざっくり総額は2,000万〜3,000万円だが、幅が大きい
子育て費用は、進学ルートと住まい方で大きく変わります。
育て方 | 0歳〜大学卒業までの目安 |
|---|---|
公立中心・大学も国公立・自宅通学 | 1,800万〜2,300万円 |
公立中心・私立大学・自宅通学 | 2,200万〜2,700万円 |
私立中高・私立大学 | 2,800万〜3,500万円 |
小学校から私立・大学で一人暮らし | 4,000万円超もあり得る |
この金額には、教育費だけでなく、食費、衣服、通信費、日用品、レジャーなども含めたイメージです。
住宅を広くする費用、車、親の休業や時短による収入減まで含めれば、実質負担はさらに上振れします。
ただし、この総額を出生時点で全額用意する必要はありません。0歳から22歳前後まで、長い時間をかけて発生する費用です。
高校までの教育費は、公立中心なら思ったより小さい
文部科学省の子供の学習費調査では、幼稚園3歳から高校卒業までの学習費総額が示されています。
訂正後の令和5年度調査をもとに、15年間の学習費総額を次のように整理しています。
進学ルート | 幼稚園3歳〜高校卒業まで |
|---|---|
すべて公立 | 約614万円 |
幼稚園と高校が私立 | 約838万円 |
小学校だけ公立、それ以外私立 | 約1,143万円 |
すべて私立 | 約1,969万円 |
ここで見えるのは、高校まで全部公立なら、教育費部分は約600万円台ということです。
もちろん、塾、習い事、受験、部活、スマホ、交通費などで家庭差は出ます。それでも、「子育て2,000万円」の大半が高校までの学校教育費だけで消えるわけではありません。
大きな山場は、むしろ大学です。
大学費用は、進学先よりも一人暮らしで大きく変わる
JASSOの学生生活調査をもとに見ると、大学4年間の費用は、国公立か私立かだけでなく、自宅通学か一人暮らしかで大きく変わります。
大学・居住形態 | 年間目安 | 4年間の単純計算 |
|---|---|---|
国立・自宅通学 | 約108万円 | 約433万円 |
国立・一人暮らし等 | 約168万円 | 約673万円 |
私立・自宅通学 | 約173万円 | 約693万円 |
私立・一人暮らし等 | 約240万円 | 約962万円 |
この表を見ると、大学費用の現実的な山場は400万〜1,000万円程度です。
国公立・自宅通学なら400万円台。私立・自宅通学や国公立・一人暮らしなら600万〜700万円台。私立・一人暮らしなら1,000万円近くまで見た方がよい。
つまり、子ども1人あたり「大学資金として600万〜1,000万円をどう作るか」が、かなり実務的な論点になります。
児童手当は、使わず積み立てると大学資金の土台になる
こども家庭庁の案内では、児童手当は0歳から高校生年代までが対象です。支給額は、3歳未満が月1万5,000円、3歳以上高校生年代までが月1万円です。第3子以降は月3万円です。
第1子・第2子の標準的なケースで考えると、児童手当の総額はおおむね200万円台になります。
これを生活費に使う家庭もあります。それは自然です。子育て中は日々の支出が増えるため、手当を現金のまま使う必要がある家庭も多いはずです。
一方で、家計に余裕があるなら、児童手当をそのまま教育資金に回すだけで、大学費用の土台になります。
児童手当は、大学費用をすべて解決する金額ではありません。ただし、親が追加で準備すべき金額をかなり小さくする土台になります。
こどもNISAは、月2万〜3万円の設計が現実的
2027年開始予定とされるこどもNISAについて、0〜17歳を対象に、年間投資枠60万円、非課税保有限度額600万円という前提で試算しています。
制度は最終的な法令・金融機関の実務で確認が必要ですが、教育資金づくりの考え方としてはかなり分かりやすいです。
0歳から18歳まで、年率5%で運用できたと仮定すると、概算は次の通りです。
毎月の積立額 | 投資元本 | 18歳時点の概算 |
|---|---|---|
月1万円 | 216万円 | 約345万円 |
月2万円 | 432万円 | 約691万円 |
月3万円 | 600万円 | 約986万円 |
月5万円 | 600万円 | 約1,140万円 |
月3万円は約16年8か月、月5万円は10年で元本600万円に達します。その後は追加投資せず、18歳まで運用を続ける前提です。
もちろん、年5%は保証されません。大学入学直前に暴落する可能性もあります。教育資金として使うなら、15歳前後から数年分ずつ現金や低リスク資産へ移す設計が必要です。
月2万円なら、多くの大学費用に届きやすい
大学4年間の目安と、こどもNISAの試算を並べると、かなり見通しが立ちます。
進学パターン | 4年間の目安 | 準備の感覚 |
|---|---|---|
国公立・自宅通学 | 約430万円 | 月2万円でおおむね届く |
国公立・一人暮らし | 約670万円 | 月2万円でかなり近い |
私立・自宅通学 | 約690万円 | 月2万円でかなり近い |
私立・一人暮らし | 約960万円 | 月3万円が一つの目安 |
この見方をすると、子育て費用の不安は少し具体化します。
「子ども1人で3,000万円必要」と見るのではなく、「大学費用として600万〜1,000万円を18年かけて作る」と見る方が、はるかに扱いやすいです。
児童手当を積み立て、親が月1万〜2万円を足す。あるいは、余裕がある期間だけ月3万円にする。これだけでも、大学費用のかなりの部分は見えてきます。
親のNISAや老後資金を削りすぎない
ただし、こどもNISAを最優先にするのは危険です。
子どもの教育費は大切ですが、親自身の老後資金や生活防衛資金を削りすぎると、家計全体の安全性が落ちます。
優先順位としては、次のように考えた方が現実的です。
優先順位 | 内容 |
|---|---|
1 | 生活防衛資金を持つ |
2 | 親自身のNISA・老後資金を止めすぎない |
3 | 児童手当をできる範囲で教育資金に回す |
4 | 追加で月1万〜3万円を子ども用に積み立てる |
5 | 15歳前後から大学費用分を安全資産に移す |
教育資金は、奨学金、授業料減免、進学先の選び方、自宅通学、アルバイトなどでも調整できます。
一方で、親の老後資金不足は子どもに別の形で負担を戻します。だから、子ども名義の資産を作ることだけを正解にしない方がいいです。
脱労働の観点では、子育て費用は「必要額」ではなく「時期」で見る
脱労働を考える人にとって、子どもの費用はかなり大きな論点です。
子どもがいるなら正社員を続けるしかない。そう考えるのは自然です。
ただ、費用を時期で分けると、見え方は変わります。
時期 | 主な費用 | 考え方 |
|---|---|---|
0〜5歳 | 保育、日用品、時短による収入減 | 現金余力と働き方が重要 |
小中高 | 学校、塾、習い事 | 公立中心なら急激な山場は抑えやすい |
15歳前後 | 大学資金の安全資産化 | 投資から現金へ移す判断が必要 |
18〜22歳 | 大学、住居、生活費 | 最大の山場になりやすい |
つまり、ずっと最大出力で働き続ける必要があるとは限りません。
教育費の山場に向けて、児童手当、こどもNISA、親のNISA、現金、収入源を組み合わせれば、働き方を一部緩める余地は残ります。
結論:子育て費用は怖いが、分解すれば対策できる
子ども1人に2,000万〜3,000万円という数字は重いです。
しかし、それは22年前後にわたって発生する総額であり、すべてを出生時点で準備する話ではありません。
高校まで公立中心なら、学校教育費は約600万円台に収まりやすい。大学費用は、自宅通学なら400万〜700万円台、一人暮らしなら700万〜1,000万円程度が大きな山場になります。
児童手当を土台にし、月2万〜3万円を長期で積み立てられれば、大学費用の不安はかなり小さくなります。
子育て費用は、総額で怯えるより、大学費用という山場に向けて18年かけて準備するものとして見る方が現実的です。脱労働を考えるなら、子どもがいるから自由を諦めるのではなく、制度、投資、進学ルート、働き方を分けて設計することが重要です。